『睡眠障害』井上昌次郎著(講談社現代新書)

 最近、遅寝遅起きがすっかり定着してしまった。布団に入っても夜明けまで寝付かれず、目が覚めるのは昼近く…そんな毎日。
 なんでも、日本人の五人に一人が不眠症に悩んでいるという。二十四時間営業のコンビニやインターネットの普及、交替勤務の導入…効率や便利さと引き替えに、睡眠があまりにも多様化せざるを得なくなった現代社会。私に限らず、睡眠障害に苦しむ人は多いらしい。もはや一種の現代病なのだろう。
 本書は、そんな「睡眠障害」について一般向けに解説を行った、おそらく初めての著書である。前半では睡眠の基本的な役割とメカニズムについて整理し、後半の大部分を睡眠障害の諸症状についての解説に充てている。昔から知られる金縛りや寝言、こむらがえりから、最近注目されている「睡眠時無呼吸症候群」に至るまで、全ての睡眠障害を網羅し整然と分類することを可能にした睡眠研究の進歩には、見事と言うほかない。また、一般書レベルの平易さを保ちつつ(←ここが大切)、研究者として学問に対する厳密な姿勢を貫く筆者にも好感が持てる。
 ちなみに筆者は「本来、睡眠は柔軟性に富む」と記している。人々の生活が多様化した現在、各自が自分に適した睡眠を工夫すればいいらしい。なら、夜型人間でも気に病むことはないのだろうか…眠い目をこすりつつ、そんなことを考えてみる朝のひととき。

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現在、大学で書評誌の編集に携わっています。
書評と言いながら、最初にオチを考えてしまう私はやっぱり関西人(笑)

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